黄昏と嘘
ゆっくりと口を開きアキラはチサトに向かって怪訝そうに言った。
「……キミ?いつも僕の授業を履修してる学生だね?」
彼の意外な言葉にチサトの胸はドキンと鳴る。
え?先生、私のこと知ってるの?私、絶対に知らないと思っていたのに・・・。
チサトは嬉しくなって顔を赤らめ、笑顔で答える。
「ハイ!そうです。日ノ岡 チサトです」
するとアキラは少し顔を歪め、さっきよりも露骨に怪訝そうな表情を見せ静かに言った。
「僕はね……、キミみたいなコ、大嫌いなんだよ?」
大嫌い…?どういうこと……?
彼の言葉にチサトはショックを受ける、と言うよりもどうしてそんなことを言うのだろうか、ただわけがわからなかった。
「僕に取り入っていい評価をもらおうと思ってるのかしれないけど。授業前にはきちんと決まった席に着いていかにもマジメに授業を聞いてますって顔して」
アキラの言葉にチサトはようやく自分は彼にいいように思われていないと理解する。
どうしていきなりそんな風に言うのだろうか、自分は彼から見てそんな風に見えるのだろうか。
授業を頑張って受けるのは決していい評価が欲しいから、そんなことではないのに。
チサトはどうしてもわかってほしくてアキラにまっすぐな視線を向けて必死になって言い返す。
「あの、私、そんなつもりじゃないです!本当に時事英語研究に興味があって……!
それに……!」
そこまで言いかけてハッとして口を両手で抑える。
思わず彼のことがが好きだから、と言いそうになってしまったからだ。