黄昏と嘘
「それに?」
アキラもまたチサトにどこまで見られていたか、気になっていた。
しかし直接尋ねることもできずそれ以後言葉を発さずチサトににじり寄る。
少しづつ後ずさるチサト。
「!!」
背中に冷たい壁の感触。
どうやらこれ以上は下がれないと悟る。
アキラに少しの恐怖をおぼえた彼女は視線を少し逸らし床に落とす。
どうしよう、どうしたら……。
チサトが戸惑っているといきなりアキラは彼女の両肩をきつく押さえながら言った。
「キミ……見てただろ?」
彼の言葉でチサトはさっきのことを思い出す。
外を見つめて泣いていたこと……、きっとそのことを言っているのだろう。
でもチサトは知らないフリをして首を左右に振る。
見てた、なんてそんなの言えるわけがない。
「な……、なにも知らない……です」
一生懸命知らないふりをするけれど震える声にアキラは彼女を信用はできないようだった。
どうしようもない思いをぶつけるようにチサトの肩をさっきよりもきつく壁に押さえつけた。
「痛いっ!」
思わずチサトは声をあげる。
でも彼は力を緩めることはなかった。
「絶対に言うなよ!言ったら……キミを壊してやる……!」
メガネの奥から凍りつくような視線をチサトに向ける。
さっきの別人のようなアキラの姿を思い出しながらチサトは彼からの視線に応えるようにまっすぐに見つめ返す。