黄昏と嘘

アキラはそんなチサトにお構いなしにそのままの姿勢で冷たい声で言い放つ。

「キミも僕のことが嫌いだろう?」

彼の言葉にチサトは何て答えたらいいのかわからない。
ただそのアキラの言葉は間違っている、嫌いだなんてありえない。
チサトはこんなにもアキラのことを想っているのに何も伝えることができない、言うことができない。

今、たとえ彼女が彼に想いを伝えたとしてもそれが一体、彼のなんになるのだろうか。
彼は自分に微塵たりとも興味など持ってはいない。
わかっている、わかっているけれど胸が痛い。

アキラはチサトの答えを当然、期待して待っているでもなく、そのまま彼女を突き放し、その拍子にバランスを崩して少しよろめく。
アキラはそんなチサトに気づいたのか気づいていないのか、知らん顔でくるりと背を向けてそのまま黙って教室のドアへと向かう。


チサトはそんな彼が教室を出て行く姿を呆然と見送り、ドアが閉まる音と同時にヘナヘナと床に座り込んだ。

触れてもいないはずなのにチサトの唇が熱を帯びる。
やがてその熱は再び身体中に広がり、ぼうっとして微熱があるような、そんな感覚に陥る。

ぼんやりと恍惚とした……。


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