黄昏と嘘

階段を降りて一旦、外に出ると晴れてはいたけれど初夏、というよりもぬるい風が髪を揺らす。

もう梅雨が近いのかもしれない。

少し歩くスピードを落とし、カノコと足並みをそろえ、ピロティまでやってきた。
そしてふたりはどちらからともなくベンチに腰掛けて歩く学生たちを眺める。
さっきまで動いていたせいか湿った空気のせいか、暑いせいか身体にジトッとした感触があった。

「もうすぐ梅雨なのかなあ?
……催促っていうか、あーまあ、そんな感じかもしれない」

「え?」

チサトは教室で聞かれたカノコの質問に答えたつもりだったのだが、間が空きすぎたせいか一瞬、彼女は不思議そうな顔をした。

「だからー、大家さんからの……」

チサトゆっくりとカノコの方を向いて言った。
そこまで言ってやっと理解したようにカノコは笑った。

彼女もチサト同様、少し暑さを感じるのか額に少し汗がにじんでいるようでカバンからハンカチを取り出して額に押し当てる。
そんなカノコの仕草を見てチサトは眩しそうな顔をして空を見上げる。
太陽は真上、次の授業が終われば昼休みだ。
きっとその頃にはもっと気温が上がり、湿気に不快感を感じるかも知れない。


「もうさ、方法なんかないんだからさっさと実家に帰っちゃえば?」

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