黄昏と嘘
ふたりが次の授業が行われる教室のある建物に入ると外とは違い、中は薄暗かったせいかまだひんやりとしていた。
今までいた眩しい光の中から全くの別世界のようでチサトは一瞬、目眩に襲われるような感覚に陥って何度も瞬きをする。
何度か目の瞬きの後、チサトの瞳に誰か人影がこちらに向かってくるように見えた。
あれ……?
チサトは目を手の甲でゴシゴシとこすって目を凝らしてその人影の方を見る。
誰か、確信したとき、チサトの胸がドクンと鳴る。
小野先生……。
遠目でしかも影で暗かったけれどチサトにははっきりとわかった。
思わず立ち止まりじっと彼の方を見つめる。
アキラは気づかないようでうつむきがちにゆっくりと歩いていたが、少しして彼女たちに気がついたのか顔を上げてチサトたちの方を見た。
一瞬、彼の表情が変わる。
そしてチラリと冷たい視線をチサトに向けた。
「あ……」
思わずチサトから小さな声が漏れる。
「うわ。ねぇ……いつになく冷ややかな感じじゃない?」
同時にカノコがチサトに耳打ちする。
「そ、そうかな……」
曖昧に答えながらもチサトはあのLL教室での出来事を思い出していた。
おそらくそのことがあるからカノコにもわかるくらいに冷たい視線を彼女に向けたのだろう。