黄昏と嘘

「あのっ、えっと……」

そこまで言ってみたものの言葉が続かずチサトは項垂れる。

「あのねぇ、アンタが小野先生とどんな秘密、持ったのかはわからないけれど、そうして大声で言いませんなんて言ったら半分ばらしてるようなもんよ?」

「……」

「別に何があった?なんて野暮なこと聞かないけどさあ。
やっぱ小野先生は止めたほうがいいと思う」

あまりにも真剣な声のカノコに何もチサトは顔を上げることができない。

でも止めた方がいいとかそういうのはできない。
だって先生は……。

なんとかカノコにわかってもらおうと顔を上げるとさっきの声の通り、やはりカノコの表情は真剣でかたかった。

「でも……」

そう答えるまでで精一杯で、それ以上の言葉は浮かびもしない、続かない。
カノコが自分のことを気にかけてくれているのはわかっている、でもきっとアキラの本当のところはあんなじゃないはずだ、それはカノコにどう説明してもきっとわかってはもらえない。

なぜならそれはチサトでさえ、その確信はないのだから。
ただ好きだという感情がそう思わせているだけなのかもしれないから。

チサトの中にあるアキラの本当はみんなが思っているような人ではない、でもその思いは感情的で抽象的な順序立てて言えないことが悔しい。

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