黄昏と嘘
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学校ではやりきれない日々ばかり続き、そして家に帰ると今度はモモカが心配そうに次の住処のことをチサトに聞く。
大家とは違い、モモカには心配かけたくない、チサトはそう思っていた。
「大学、忙しいだろうけど大丈夫?
住むところ探してる?」
夕食も終わってチサトはまだ部屋に帰らず、そのままリビングで体育座りをしてドラマを見ていた時、台所の片付けが終わったモモカがやってきてエプロンをはずしながらそっとチサトに話しかけた。
え……?
なんて答えたらいいんだろう、そう思ったチサトは聞こえなかったフリをして黙ったまま彼女の顔を見上げた。
そんなチサトにモモカの表情が一瞬、曇る。
「いいところ、見つからない?」
心配そうに尋ねるモモカにチサトは焦り、とうとうチサトはウソで答えてしまった。
「心配かけてすみません。
でも決まりましたから、大丈夫ですよ?」
少しでも嘘がわからないようにと立ち上がり、ソファまで移動してクッションを抱えて座り直す。
「あ、そうなんだ!
そっかー。よかった」
両手を合わせてパンと叩くようにして安心したようなモモカの笑顔を見た時、チサトはウソをついたことを後悔した。