黄昏と嘘
「あっ、あの、でも……」
嘘に喜ぶモモカを見て思わずそう言ったチサトだったがでもやっぱりウソでした、とももう今更言えない。
ただチサトは胸の奥が痛む。
「じゃあ、少しづつでも荷物、まとめていかないとね。
ちょっと早いけど、今晩のうちに始めちゃう?
今晩、私、時間あるし手伝うよ?」
「あ……、ありがとうございます」
ごめんなさい、嘘です。
なんで嘘ついちゃったんだろう……。
「勉強関連のものは自分で片付けたほうがいいでしょ?
だから私は使わないチサトちゃんの食器とか片付けるね」
チサトの行き先が決まらないのは自分のせいだと思っていたモモカはこれで安心して帰れる、そう思った。
もう、行き先が決まったなんて大ウソです。
そんなチサトの心の声も届くはずもない。
「……わかりました」
本当はどこにも行くところがないんです。
ごめんなさい、ごめんなさい。
大好きな人に嘘をついてしまった、モモカの嬉しそうな顔を見つめながらチサトは哀しくなった。