黄昏と嘘
「あ、そうだ、住所、教えて?」
そんなモモカの言葉にチサトはドキッとする。
住む所もないのに住所もなにもあったもんじゃない。
焦るチサトだったが新しく住むところが決まったのならそう聞かれるのも当然だろう。
「えっと……、まだ、教えてもらったんですけどメモなくしちゃって、その、また今度でもいいですか?
それより片付け手伝ってくれるなら私とりあえず自分の部屋に戻って私物を……」
なんとか話をそらせようとチサトは立ち上がる。
「あ、そっか。わかった。
そうだね、先、片付けしないとね……。
ここは任せてね」
背中でモモカの声を聞きながらひとつ嘘をついてしまうとまたその上に嘘をついてしまうことになる、そしてそのうちきっと何が本当で何が嘘なのかついた本人もわからなくなってゆく
……そんなことを考えていた。
チサトの中の罪悪感がどんどん大きくなってゆく。
自分の部屋に帰り、ドアをバタンと閉めた時、我慢してたため息が漏れた。
「どちらにしてもここにはいられない。
片付けはしないと……」
そうつぶやいてごちゃごちゃになっている机周りの必要なもの不要なものを分け始めた。