黄昏と嘘

「いいんですか……?
ありがとうございます」

受け取れない、とも言えないのでチサトはお礼を言って赤いリボンを解いた。
箱を開けると中から香水のビン。

「これ……?」

「これはね、フェラガモ。魅惑の香り……って感じかな。
でも私には可愛いすぎるかなーってね。
今のチサトちゃんにはまだ大人っぽいかもしれないけど、これから社会人になったらきっと似合うんじゃないかな?
それでステキな人と出会えるように……そう思ってね」

ステキな人か……。

モモカのその言葉にチサトは香水のビンの向こうにアキラの姿を思い浮かべる。
今頃、彼はどこで何をしているのだろう。
誰かと過ごしているのだろうか、それともひとりでいるのだろうか。 
そして同時にアキラの「彼女」がチサトの中に影を落とし、自分は嫌われているんだとまた思う。


「どうしたの?」

「あっ、いえ……なんでもないです。
あの、これ、すごくいい香りですね!」

チサトは開けた香水のビンからほのかに匂う香りにうっとりし、
モモカに視線を戻して笑って答える。

いろんなことがありすぎて素直に笑えない。
ちゃんと笑えているだろうか。

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