黄昏と嘘
lesson 2
・タイムリミット
―――7月下旬。
とうとう来るべき時が来てしまった。
モモカが今夜、四国へ帰る。
新宿駅新南口のバスターミナルでチサトとモモカ、ふたり並んで待合のベンチに座っていた。
ここから彼女は地元の高松へ帰るための長距離バスに乗る。
モモカは明日の午前には到着すると言っていた。
この新宿駅新南口のバスターミナルにはたくさんのバスが待っている。
夜も9時過ぎたというのに夜行バスの待ち合わせのためか、昼間のように明るくひとが多い。
ひとが多いのは夏休みの時期になったから余計なのかもしれないが。
それにしても暑い、どうやら空調があまり効いていなようだ。
チサトはぼんやりと背中を流れる汗を感じながら行き交うたくさんのバスを見つめていた。
関西方面へ向かうバス。
東北方面、北陸方面……。
バスを待つひとはみんなから東京ここから離れて行く。
そしてモモカもそのひとりであり、そんな実家へ帰る彼女の荷物は小さなショルダーバッグひとつだけだった。「手荷物は少ない方がいいから」と荷物はすべてもう実家に送ったと言っていた。
だから彼女の今夜の姿はいつものように会社へ行く、チサトはそんな風に思えた。
玄関先で寝ぼけたパジャマ姿で「いってらっしゃい」と送るときと同じだ。