黄昏と嘘

チサトは空をぼんやりと見上げる。
夜空は曇っているせいなのか、都会のせいなのか星が見えない。
見えたと思ったらそれはビルの明かりだったり。

何が本当で何が嘘なのかわからない。

今の彼女は何を見ても、何を考えてもだんだんと落ち込んでゆきそうになる。
それでもとにかく気持ちを切り替えて前進あるのみだ、と自分で自分を必死になって励まし歩き始める。


「あ……お腹空いた」

ふとそうつぶやき、チサトはお腹に手を当てる。
さっきモモカと一緒にご飯食べたところだというのに自分の胃はどこまでのんきなんだろう、そう思うと情けなくなってきた。

でもこんなに落ち込むのは空腹のせいかもしれない、ファーストフードでも買うか、コンビニ寄って何か買うかしたほうがいいかもしれない。
食べることによって少しはポジティブにこれからのことについて何かいい案が浮かぶかもしれない。
そんなこと考えてどこか適当な店を探しながら再び歩き始める。

それにしてもどうしてこの街は昼間のように明るいんだろうか。
ひともたくさんで全然、夜という感じがしない。

いつもこんなに明るかったっけ?

おまけに蒸し暑く、でも暑いと言ってもその都会の暑さは息苦しい感じの蒸し暑さだ。
これからもっと暑くなっていくのかと思うとうんざりする。




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