黄昏と嘘

「思い出してくれた?
ねえ、こんな時間に何してんの?」

相変わらずだな、とチサトは思った。
チサトが嫌がっているというのに全く気づいた様子もなく、逆に調子に乗ってどんどん話しかけてくる。
早く離れたい、帰りたい、そんな思いでチサトの頭の中がいっぱいになり、今度は早足で歩き出す。

「私……急いでますから」

「俺さ、アンタのこと気にいっちゃったんだよねー?
今からどっかで遊ばない?」

そんなこと言われても私は気に入ってません!

そんなチサトの気持ちもお構いなしで彼はずっと後をつけてくる。
どうやらこういうタイプははっきり断らないとわかってくれないようだ。

「急いでますって言ってるでしょ?
それに遊びません」

後から追いかけてくる男の前にくるりと回って立ち止まり、腰に両手を当てて少しムッとしたような口調で言った。

「いいじゃん?
ちょっとくらい」

でもそんな態度からの彼女の思いも伝わらなかったようで彼は立ち止まったチサトの前に回り込む。
だいたいチサトにはそんな人間相手にするほど今はいろんな意味で余裕などない。

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