黄昏と嘘
「……ホントに一人暮らしなの?」
「あ?ああ。そうだよ」
とにかく、あの荷物だけでも実家に帰る前までにどうにかできれば。
それからのことはそのあと考えればいい。
彼の「一人暮らし」という言葉が彼女にとって天から降りてきた蜘蛛の糸に思えたのだ。
もうこの際、誰でもいい。
とにかく住所を作っておかなければいけない。
時間稼ぎをしなければ。
「そしたら……あの。
お願いきいてほしいんだけど……」
とりあえず荷物は彼のところに送らせてもらってそれからのことはまた考えればいい。
チサトは背に腹は替えられない、そんな思いからだったのか、とんでもないことを口走っていた。
「住所を……貸してくれたら……」
「住所を貸す?」
彼は不思議そうな顔をしてチサトに聞き返す。
でも彼女は本当の事情を話すとなんだか弱みを握られるような、そんな感じがして、それだけは避けたいと適当にウソをついた。
「えっと……、ちょっと近いうちに友達のところからダンボール何個かの荷物が送られてくるんだけど……。
今、私の部屋狭くて送ってこられても邪魔になって……、その、困るかなって……」