黄昏と嘘
……だんだんと、いつもの雑踏に戻る。
「すみません……」
やっと冷静になったチサトはアキラに謝る。
チサトの声に足を止めたアキラだったからなんとかしてくれるかもしれないと焦ってしまったから、それにしてもとんでもないことをやってしまった、そう思ってももう遅い。
これでまた嫌われたに違いない。
今度はチサトがどう考えても確実に悪い。
別にこんな急な思いつきでアキラに頼らなくても、考えたら事情を知っているカノコにでもとりあえずは住所を貸してもらってもよかったかもしれない。
ちゃんと考えればいくらでも何か方法があったかもしれない。
チサトは自分の浅はかな言動に嫌気がさし、泣きそうになってしまう。
「……でも、先生。
私これからは夏休みで実家に戻るけど……。
9月からホントに住むところが……ないんです。
とりあえず住むところは……、夏休み中に考えるとして大家さんが私の新居に早く荷物を送りたいって言ってて……」
チサトは涙声になりながら自分を弁護するように、わざとアキラを困らせるためにこんなことをしたんじゃないとわかってもらいたくて一生懸命言葉を探す。
アキラはそんなチサトの言葉にため息をつく。