黄昏と嘘

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キレイに片付けられてるなあ。


開けられた玄関ドアから見える部屋に思ったチサトの第一印象だった。


男性の一人暮らしだからきっと大変なんだろうと思ったけれど全くそんなことを思わせるような部屋ではなかった。

でもそれは「ああ、そうか、小野先生だからか」、
そう思うことで納得できた。

アキラの辞書の中にはきっと手抜きという言葉はないだろう。
逆にチサトの中では大有りだけれど。


「失礼します」

 チサトは緊張した面持ちで言って部屋へあがる。


「一度しか説明しないからちゃんと聞いておくように」

アキラはチサトが部屋にあがるのを確認すると、面倒くさそうな表情を見せながら部屋を指さして案内し始めた。


「ここが洗面室……、それからリビング……。
あそこの納戸には時事英語の資料があるから、
もし必要なものがあれば使いなさい」


「ありがとうございます」

説明を聞きながら好奇心からチサトはついキョロキョロとする。

アキラの住むこのマンションはひとりで暮らすのには十分すぎるほどに広いスペースで、どうして一人暮らしにこんな広さが必要なんだろうか、そんなことを思いながら。

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