黄昏と嘘

そして彼は奥の部屋のドアの前に立ち、チサトの方を向き直り言った。

「それからキミの部屋はここだ」

「あ……はい……」

私にちゃんと部屋、貸してくれるんだ。
物置みたいな所でも仕方ないって覚悟してたのに……。

少しびっくりしながら案内された部屋の中を見て彼女は再び驚いた。
チサトに与えられた部屋は窓が大きくて日差しがよく入りそうな部屋。
そして備え付けのクロゼット、あとシンプルながらも机とベッドがあった。

今までモモカと暮らしていた部屋とそう大差はなく、暮らしてゆくにはこれでじゅうぶんだ。

机とベッドがある、ということはアキラがわざわざチサトのために揃えたものだろう。
でもチサトはそんなことは頭の中に微塵も浮かぶこともなかった。
ただ、想像してた以上のいい部屋にチサトは言葉が出なかった。

「だいたいこれでわかったな?」

何も答えない彼女にアキラは確認する。
でもその言い方は一切質問は受け付けない、そんな言い方のようだった。

チサトは自分の部屋があることに驚いて忘れていたがふと彼のその言葉で思い出す。
あの素通りした部屋、やっぱり気になる。
大した部屋じゃないとさっき思ったけれどやはりここでしばらく暮らす以上は知っておいたほうがいいかもしれない。

チサトがあれこれを考えあぐねている間にアキラはチサトの元を離れ、自分の部屋に戻ろうとしていた。

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