黄昏と嘘
……ガタンッ!
前の席で椅子の動く音がしてハッとして我に返るチサト。
ふたりは席から立ち上がったのだろう、でもあんまりジロジロ見るわけにはいかないから、彼女は顔を隠すように本を立て隠れるようにややうつぶせるような姿勢になる。
そのままじっとしてみるも、彼らもまたそのまま動く気配がないようだった。
ど……どうしよう……。話、聞いてたの、バレたのかな……。
「キミ、本がさかさまだよ?」
「え?」
チサトは慌てて立てていた本を自分に向けて確かめる。
わっ、しまった!
不審に思われたかもしれない、それをなんとか誤魔化そうと机に散らばるルーズリーフや本、分厚い辞書をバタバタと片付けるように、いや、でも結局それは余計に散らかす結果となった。
ふと手を止める。
そしてまた震え始める手。じっと自分の手を見つめてゆっくりと顔をあげると彼らはもう図書館のドアのところまで歩いていた。
たった、それだけのことなのに、こんなに切なくて泣きそうになる。
いつの間に私はこんなにも惹かれたんだろうか。
彼女はその2人の後姿を見送りながら思った。
先生に誰かいたとしても、それでも構わない。
どうせ先生と自分じゃ……、はじめからそういうのわかってた。
それでも会うたびに想いは募る。
だったら、せめてこころのまま……こころの奥でそっと想っているくらい、それくらい許して欲しい。
先生には絶対に迷惑かけないから。