黄昏と嘘


何日も会わない、そんな日々が続き、月曜のアキラの授業でチサトは1週間ぶりに彼に会うということも特に珍しいことでもなかった。
正確には会わない、というよりも見かけない、というほうが正しいかもしれない。

一緒に暮らしていながら見かけないという言い方も変だが、今のふたりにはその言葉のほうが合う。

一緒に暮らせる・・・、多少の不安はあったけれどかすかに期待感、それがチサトが初めてアキラのマンションにやってきた日に抱いた思いだった。

しかしそれはその当日で少し違う思いになり、今は全くそういう思いはなくなってしまっていた。
このマンションで暮らすことはチサトの中で自分の存在はアキラにとって迷惑をかけるだけだから早く、早く出て行かなければ、その思いだけだった。

初めの頃は一緒に暮らすことで同じ時間を過ごすことが増え、どうにか名誉挽回を、と思っていたのだが、それすらもアキラが家を空けているから叶うわけないのだ。

しかし今までのことを考えれば、何をやったとしてもやることなすことすべてが裏目に出ることのほうが多く、結果としてアキラに嫌われてきた。
それなら今の一緒に住んでるのか住んでないのかわからない状態でいるほうがまだいいのかもしれない。

そしてその間に新しいどこか住むところ、・・・それとも諦めて実家に戻るか。


< 92 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop