黄昏と嘘

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「あ、もうこんな時間・・・」

弁当を食べ空腹も満たされたチサトは疲れもあったせいか、
いつの間にか机にうつぶして眠ってしまったようだった。

チサトは眠そうに目をこすりながら壁にかかる時計を見ると時計の針は0時近くを差していた。

立ち上がり、食べ後の弁当の器を片付け、ゴミ箱に入れようとしたとき、丸められた紙が入っていることに気がついた。

「なんだろ、これ・・・」

これは彼女が捨てたものではない。
もしかしたらアキラの論文の資料か書き損じかもしれない。

無意識にチサトはその丸められた紙を手に取りテーブルの上で広げ、驚いた表情になった。

「なに・・・これ・・・」

彼女はアキラの書いた英語の文字が出てくると思っていたのにそこにあったのは楽譜だった。
どちらかと言えば音楽に疎い彼女だったから楽譜を見ただけではそれがなんの曲なのかわかるわけもない。

なぜこんなものがここにあるんだろう。
誰の楽譜なんだろう。
ここに住んでいるのは先生だけ、だとしたらこの楽譜は先生の・・・?
先生は何か楽器弾けるのだろうか。
よく見れば楽譜に符号や文字も書き込みもある。
見覚えのある文字。
・・・、まさか。

チサトでなくてもアキラと楽譜なんて誰も想像なんてしないだろう。
でも目の前にある楽譜を見つめながらこれはアキラのものだと思うと手が少し震え胸がドキドキと高鳴った。





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