黄昏と嘘
それにしても、疲れているから出迎えなんていらない、そんなことを言っても帰って誰も出迎えてくれないということは淋しいとは思わないのだろうか。
モモカと一緒の頃、チサトが出迎えることを彼女は喜んでくれたし、たまに逆のことがあってチサトが遅く帰った時、モモカが出迎えてくれたときはとても嬉しかった。
ひとりで暮らしているのならそういう事はないけれど、誰かと一緒に住んでいたらやはり迎えに出てくれると嬉しいものじゃないのだろうか。
・・・ああ、そっか。
私、だからか。だからいらないんだ。
チサトは自嘲する。
ではチサトでなかったら・・・?
チサトではない誰かだったら、アキラはあんな態度は取らないのかもしれない、そう思った。
「出迎えなんていらない」と言っていてもアキラの中に淋しいという感情はきっとあるはずだ。
ふとチサトはあのLL教室での出来事を思い出していた。
あの黄昏の中、泣いていた姿。
そしてそのアキラの姿は見えないはずの「彼女」思い起こさせる。
「彼女」の出迎えならきっとアキラは嬉しいと思うのだろう。
チサトが「彼女」のことを知ってどんなにか頑張って髪型や服装を真似てみたとしても、それでもアキラはチサトを必要とはしない。
淋しいアキラの感情を埋めることができるのはチサトではないのだ。