黄昏と嘘
チサトの中にいろんな思いが駆け巡る。
アキラにとって「彼女」はどんなひとなのか。
どれくらいに「大切」なひとなのか。
そんなにも大切に思っているのなら離婚したというのは・・・?
今も彼の想いが変わらないというのならどうしてチサトをここに住まわせてくれているのか。
あの時、チサトも強引に頼み込んだけれど断ろうと思えばなんとでもできだはずだ。
チサトはアキラにいろんなことを聞きたかった、そして確かめたかった。
でもただでさえそんなこと、すれ違いの生活の中、普段の何気ない会話でさえままならない状況だというのに聞けるわけもない。
偶然に、ふたりが一緒にいたとしても、今のように会話がない。
チサトがこの家のことでわからないことがあって話しかけても無視されるか、部屋の向こうから鬱陶しそうに返事をするだけだったから。