ありふれた恋でいいから
「心配要りませんよ。まあ、少しぐらいの無理ならまだ通用する年齢だし、つい頑張っちゃいますよね」

俺の動揺がよほど酷かったんだろうか、医師は少し苦笑いを滲ませながらも言葉を補った。

「そうですね…さすがに最近無理し過ぎだったかもしれません」

「暫くは食事と睡眠時間を意識して生活すること。これが一番ですよ」

「はい…気を付けます」


カルテに記入する手を一旦止めてそう助言した医師は、とりあえず点滴の間だけでもしっかり休んで下さいと念を押すと、部屋を出て行った。


再び静かになった室内に、規則正しい秒針の音が止まることなく響く。

点滴はまだまだ終わりそうにもなくて、言われた通りもう一度硬いベッドの上に横になれば。
ワイシャツの胸ポケットに入ったままのそれが存在を主張していた。
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