ありふれた恋でいいから
須藤が結婚。
ショックじゃないと言ったら大きな嘘になる。
けれど彼女に誰かがいることぐらいは、簡単に想像しうる範囲にあったものだ。

元々、苗字が変わっていてもおかしくない年齢だということはずっと前から覚悟していたことだから。

それでも俺は、須藤を諦めることなんて出来ない自分をとうの昔に知っている。

…いや、教えられたんだ。

薬が効いてきたせいだろうか、じわじわと押し寄せ始めた睡魔に引き摺られる意識の中で、俺は思い出していた。


もう一度須藤への想いを確信した日のこと―――つまり、梓と別れた日のことを。
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