ありふれた恋でいいから
『…俺の方こそ、ごめん』

…もし、自分がどうしようもなく辛い時、傍で悩みを聞いて支えてくれる存在がいたら。

会いにも来ない、話す時間さえ作れない遠くの彼氏より、近くにいてくれるその人に惹かれた梓の気持ちをどうして一方的に責められるだろう。

形は違えど、離れた二人に終わりが来ることは否めない未来だったのかもしれない。

あの時、梓の気持ちに応えたことは間違っていたのだろうか。
一緒にいられない未来があるなら恋人になるべきじゃなかったのだろうか。

どれだけ自問しても答えに辿り着かない中で分かっているのは唯一つ。

結局俺は彼女を大切には出来なかったということ。

何度も謝罪の言葉を口にして項垂れる梓の顔に光る涙の跡が、胸に突き刺さって痛かった。
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