ありふれた恋でいいから

伝えるべき気持ちがあるから

***


―――目を覚ますと、いつの間にか辺りは暗くなっていた。

時間にして2時間ぐらいが経過しただろうか。

自宅でもないのに、深い眠りに落ちてしまった自分に内心驚きつつも、最近どことなく感じていた気怠さが身体から消えていることに気付いたのも事実だった。

様子を見に来た看護師に点滴を外してもらうと、言われた通りに時間外窓口で会計を済ませ、出口へと向かう。

照明の落とされたロビーは人の気配もなく、寒々しさがひっそりと漂っていた。






…須藤はどこにいるんだろう。


不意にそんな疑問が湧いて、受付カウンターの背後に繋がる扉に目を遣った。

恐らくまだ勤務時間中と思われる時刻。

彼女はあの扉の向こう側で仕事をしているんだろうか。
< 117 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop