ありふれた恋でいいから
あの日から、季節はどれだけ流れただろう。

流れた季節は、俺たちをどれだけ大人にしただろう。

この広い空の下、何処にいるかさえ分からない須藤をどんなに想っても、そう簡単に会えるものではないと諦めていた。

そもそも彼女を傷つけた俺に、彼女の人生を狂わせた俺に、彼女を想う資格なんて無いのだから、彼女のが誰のものになっても仕方ない。

会えなくても、気持ちを伝えられなくても、ただ想えるだけで幸せな恋なんだと言い聞かせてた。



でも、違う。

それは大人になった俺が覚えた無意識な防御策だ。

傷付きたくなくて。

傷付けたくなくて。

迂闊だった自分の選択を謝るのがただの自己満足だと非難されるのが怖くて。
あの日のことを須藤に思い出させるのが怖くて。

想うだけでいいなんて自分に言い訳してたんだ。
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