ありふれた恋でいいから
…どうして、こんなに時間をかけてしまったんだろう。
一点の曇りすら無かった彼女を傷付けた罪の重さを推し量れば、自然と頭が深く下がる。



「…須藤を傷付けるものがあれば、俺が全力で守ろうと思ってたんだ」

それは若かった俺の、幼いけど強い決意。

「なのに、あんなことになって…須藤の努力を台無しにして…ずっと、ずっと後悔してた」

そして、成し遂げられることなく、皮肉にも俺自身の手で壊した儚い未来。

「謝る資格も、合わせる顔も無いと思ってずっと自分の中だけで須藤に謝ってた。でもやっぱり、もっと早くに伝えるべきだったんだよな」

ゆっくりと顔を上げて、目の前にいる須藤を瞳に映す。


< 125 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop