ありふれた恋でいいから

Ⅳ

降り積もる想いに祈りを捧ぐ

クリスマスが過ぎれば、街は欧米的な賑わいから一転、日本らしい和の雰囲気に姿を変える。

その変化にいつも回顧的な気分になるのはなぜだろう。

郷愁と言えば大袈裟な表現だけれど、自分は間違ってないか、何か遣り残したことはないか、立ち止まり振り返りたくなる―――そんな気持ち。

今の私にいつもよりその思いが強くこみ上げるのは、当然かもしれなかった。





『今年の冬は帰って来るの？』


地元を離れてから毎年定期便のように訊ねてくれる玲ちゃんからの電話があったのは、まさにそのタイミング。

一心に張り詰めていた糸は緩み、慶介さんと別れたことも、畑野くんに再会したことも詳らかに話してしまった。

その時は驚いた様子で話を聞いてくれた玲ちゃんだったけれど。

後日かかってきた『ウチでゆっくり話そうよ』という一本の電話に甘えて、年末年始の休暇で帰省した私は、玲ちゃんの家を尋ねていた。