ありふれた恋でいいから
『畑野くんとミキちゃんの間には、本当は何もなかったんだよ』

玲ちゃんの部屋で。
玲ちゃんの口から紡がれた意外な言葉。

その意味を咄嗟には理解できず、瞬きを繰り返す私に、彼女はぽつりぽつりと真実を教えてくれた。




あの、卒業式の夜。


先にコウくんと関係を持ったミキちゃんが、畑野くんに振り向いて欲しくて、あたかも何かが起きたように畑野くんに嘘をついたこと。
そして、酔い潰れて記憶のなかった畑野くんが、その嘘を鵜呑みにしてしまったこと。
更に、その年の大晦日の夜に、全てを畑野くんが知ってしまったことも。

地元に残った同級生との集まりの中で、偶然玲ちゃんと会ったミキちゃんは、私と玲ちゃんが親友であることを知った上で、泣きながら告白し、謝罪したのだという。

『私に謝ったって、誰に謝ったって、犯した罪は消えないんだって、言ってやったの。どれだけ実乃が傷付いて苦しんだのか、私は知ってたから』

玲ちゃんは眉を顰めながら尚も続けた。
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