ありふれた恋でいいから
行きたい、場所がある。

振り返りたい、想い出がある。

祈りたい、願いがある。


漸く年末の休暇に入り実家へ帰った俺が、すぐその場所へ向かったのは、きっとそんな想いからだ。

初詣ならもう少し大きな所に行くし、縁起が良いとかそういう謂れがある訳でもなかったけれど。

高校から近い其処は勉強が追い付かない試験前や、部活の大事な試合前には験担ぎで足を運んでいた場所。


そして、須藤と合格祈願に訪れた、神社。



鳥居を抜け、敷き詰められた玉砂利を一歩ずつ踏みしめて、冷たい空気がより一層深まる薄暗い参道を歩いていくと、この時期には珍しく高校生ぐらいの歳のカップルとすれ違う。

こそこそと、二人だけに伝わるよう声を潜めながら、けれども時折甲高い声をあげる女の子はまるであの日の須藤のようで。
彼氏はそんな彼女の手をしっかりと握ったまま、神社を後にしていった。
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