ありふれた恋でいいから
けれど、少しだけ滲んだ私の視界を、畑野くんはそっと指でなぞると。

「…違うよ。須藤は悪くない。須藤は信じてくれただろ?俺がバカだったんだ。はしゃぎ過ぎて酔っ払った俺が…、俺が招いた嘘に違いはないよ」

言い切ると、もう一度抱き寄せてくれる。
その潔さに、温もりに、心の中の蟠りや不安や何もかもが一気に溢れ出した。


「私は…、私はもう、畑野くんが好きになってくれた高校時代の私じゃないの。真っ直ぐに畑野くんを想っていたあの頃の様には純粋じゃないかもしれない…。それでも…、それでもいいの?」
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