ありふれた恋でいいから
「…須藤、ごめん」
けれど、翌日。
待ち合わせ場所に先にいた彼の顔に昨日までのキラキラとした笑顔は無くて。
代わりに蒼褪めた顔色と虚ろな目が、何かが起きたことを物語っていた。
「ごめん、って…何が?」
それでもそれが何なのか分からず、彼が口にした言葉をそのまま繰り返せば。
「須藤を裏切った…。俺、吉田と………」
寝た、と。
暫しの沈黙の後、項垂れて苦しそうに搾り出された最後の言葉は、たった一言なのに。
これまでの2人の日々も、これからの甘い未来も全て一瞬で踏み躙るほどの威力を持っていて。
「吉田って…ミキちゃん?」
僅かに残った気力で思い浮かぶのは可憐に笑う一人の女の子。
サッカー部のマネージャーで、畑野くんを好きなことを一番アピールしていた子。