ありふれた恋でいいから
…でも、そこまでハッキリ言えるほど薄情でもなかった俺は。

「…悪いけど、俺は須藤のことがずっと好きだったから」

ごめんな、と謝罪の言葉で遠回しに断れば。

振られたのなんて初めて、と吉田は捨て台詞を残して去っていった。

このことを須藤に言うべきか、迷わなかったわけじゃない。
隠し事はしたくなかったし、吉田が俺に告白したことが噂になる可能性もゼロじゃなかったから。

でも、部活も終わった今の俺に、吉田との関わりはほぼ皆無だったし。
受験シーズンに一歩足を踏み入れたこの時期に、頑張っている須藤に余計な不安は抱かせたくない。
そう判断して、俺は黙っていることにした。



……その判断が、正しかったのかそうでなかったか。

それはきっと過去を振り返った時にしか気付けないものなのだろう。

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