ありふれた恋でいいから
「須藤、今日何時まで?」

初めの頃はさすがに周りに冷やかされまくった私たちだったけど。
付き合ってひと月経つ頃からは極めて穏やかに日々を重ねていた。
図書委員だった私が貸し出し当番になっている日は、サッカー部を引退した畑野くんは必ず図書室で勉強して待っていてくれる。

「今日はテスト明けだから4時で閉めれるよ」
「ん、じゃ今日須藤ん家で勉強して帰るよ」
「いいよ。あ、数学教えてくれる?」
「喜んで」

受験を控えたこの時期に彼氏彼女を作るなんて、大人からは相当危機感が無いと思われたみたいだけど。

付き合い始めてからというもの、不思議なくらい成績が上がった私たちは、逆に今まで気合が入ってなかったんじゃと首を傾げられるほどだった。
< 3 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop