ありふれた恋でいいから
誰もが現実を生きながら、常に正しい判断を下しているとは限らない。
過去と現在と未来があるからこそ、そこに感情が存在するからこそ、『後悔』という言葉も生まれ出づるのかも知れない。


けれどそんな感情の複雑さに気付く由もなかった俺は、須藤と共に過ごす穏やかな日々に癒されて、吉田とのことなんて頭の片隅にもなくなった。

彼女の笑顔を見れば、深まりゆく寒さの中でもそこに陽だまりを感じられる。

もちろん健全な18歳の男子高校生にとって、好きな子に触れたいという衝動を抑えるのは拷問の様でもあって。

キスの途中で垣間見せるようになった須藤の色っぽい表情に、受験なんてくそくらえと理性が飛びそうになることは幾度となくあったけれど。

きっと今よりも、もっと彼女と一緒にいられることを思えば、昂ぶる感情を勉強に向けることだって可能だった。
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