ありふれた恋でいいから
コウの家をそっと抜け出し、まだ寒々しい早朝の道を生気が抜けたようにふらふらと歩く。

吉田は一緒に帰りたいと言ったけど、申し訳ないがそんな気になれない俺はひたすら断って。
そんな俺に呆れたのか、彼女はいつの間にか帰って行った。

冷たい外気に晒される俺の頭が、次第に現実を認めるのと同時に浮かぶのは、須藤の顔。

…俺は、何をやってるんだろう。

彼女を守るとか、大切にしたいとか、それは決して軽い気持ちじゃなかったのに。
春からの生活のために、どれだけたくさんの楽しみを我慢してきたのか、自分が一番よく分かっている筈なのに。


俺は自らその未来を台無しにしたんだ。
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