ありふれた恋でいいから
失恋で大事な進路を変更するなんて、と両親は最初こそ良い顔はしなかったけれど。

合格していた家政学部の就職率と資格試験の合格率が高いことを強調すると、4年間で必ず就職を決めることを条件に認めてくれた。

高校の担任に至っては簡単なものだった。

結局は『合格した』実績が進路指導の全てだから、何処に進学しようかは二の次。

最終的には本人の意思だからとあっさりと話はついて、後戻り出来ない所まで話が進めば、後は上京の準備にかかるのみ。

入学手続きもアパート探しも順調に進んで、出発まで一週間を切った頃、進学先を変えたことを聞きつけた玲ちゃんが私を訪ねてきた。

私から経緯を聞くなり涙を溢し、畑野くんを許さないと恨めしそうにしゃくり上げる玲ちゃんを宥めながら。

…私は、それでも自分の中に不思議と怒りの念が無いことに気が付いたんだ。
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