ありふれた恋でいいから
「…ずっと一緒にいられますようにって書けばよかったのかな…」

東京に発つ前日。

二人で合格祈願に来た神社にひとり佇み、あの日書いた絵馬を手にして、ぽつりと後悔が零れた。


“二人で同じ大学に合格出来ますように”


未来に何が起きるかも知らず、それが一緒にいられる最良の方法だと疑いもせずに、ただそれだけを祈ってたあの日。

「……」

でも、違ったのかな。

大学が違っても、住む場所が違っても、畑野くんの笑顔に触れられるならそれだけで良かったのに。

彼と未来を共に進んでいけることが、何より幸せだったのに。

―――ただ、傍にいて。
彼の柔らかな笑顔をずっと見ていたい。

それが、もうどんなに想っても叶わない願いなら。



……どうか畑野くんの笑顔が消えることがありませんように。

何処にいても、彼がずっと幸せでいてくれますように。
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