ありふれた恋でいいから
見届けられることもない願いだけを残して、東京への引越しを終え、家族とも離れて初めて一人で迎えた夜は、涙が止まらなかった。

何かに取り憑かれたかのように勢いで決めた選択が果たして間違っていなかったのか不安で、怖くて、先が見えなくて。
心細さに、指で覚えてる畑野くんの番号を何度押しそうになっただろう。


それでも、いざ大学が始まれば講義に資格試験の勉強にアルバイト。

新しい友達に頼もしい先輩。

女子大だからとやたら合コンには引っ張り出されて、目まぐるしくも何もかもが初めての環境に流されてしまうのも悪くないと身を任せた。

…そうして気付けば、いつの間にか家に帰らなくなった彼氏の貴博と一緒に住み始めて、もう、半年以上が経っていた。
< 46 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop