ありふれた恋でいいから

偽りの温もりで傷を埋めれば

貴博と知り合ったのは、友達に誘われて参加した合コンだった。

何回合コンに連れられて行っても、どんなにたくさんの男性に出逢っても今ひとつ心惹かれる人がいない中で。

私が彼を意識したのは唯一つの理由。


……声が、似ていたから。
貴博の声が、畑野くんの声にとても似ていたから。

落ち着いた雰囲気で同年代の男子より少し低めだった畑野くんの穏やかな声。

抱き締められるとじんわりと伝わってくるその声を、私は知らず知らずのうちに求めていたのかもしれない。

自己紹介の第一声に驚いて、まじまじと見つめた私が貴博にはよほど物珍しかったのだろう。

やけに話しかけてくる彼をどうしても遇えず、なんとなく二人で会うようになって。
当たり前のように『実乃』と名前を呼ばれた時には、泣きそうになった。
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