ありふれた恋でいいから
「…もう、人来ないね」

カウンターで返本整理をしていた私に、奥の机で勉強していた畑野くんが声をかけてきた。

「そうだね」

中間試験が終わったその日にわざわざ図書室を訪れる生徒なんてごく限られている。

よっぽどの本の虫だとか、参考書を返しに来る用事が無ければここに足を向ける筈もなくて、利用者のいない図書室は開け放した窓から秋の風が心地良く吹き込んでいた。

「今日は早めに閉めようかなぁ」

時計を見ると3時を少し過ぎた時刻。

試験明けで解禁になった部活に励む生徒の声が校庭から聞こえてくる以外には、校内に人の気配すらない。
どうせ先生に尋ねたところでそれで了承してくれる筈だ。
今やっている返本整理まで済んだら今日は帰ろう。
そう考えて畑野くんに告げようとした時だった。
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