ありふれた恋でいいから
分かってる。

3年前のあの日、振られたのは私。
進んでるフリして、ずっとあの日にしがみ付いていたのは私。

彼女がいたってちっともおかしくない。

そこにいたのは間違いなく、一度だけ私と観た映画を別の女の子と観ることが出来る、あの頃とは違う畑野くんで。

想像の範疇にあった筈の現実を目の前にして、それでも激しい衝撃を受けている自分が酷く情けなかった。


…どうして、私は前に進めないんだろう。
環境も何もかも変えて、どれほどの年数が経ったというんだろう。

彼と過ごした僅かな季節より、彼と離れて過ごした季節の方が倍以上に長いというのに。

過ぎ去ったはずの想い出を。
帰らない日々を。

……どうしてこんなに愛しく想うんだろう。
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