ありふれた恋でいいから
「…コウから聞いたことが真実だよ。あの日、夜中に何となくコウとそんな雰囲気になって。そのまましちゃったの」

「じゃあ…俺と、っていうのは…」

――俺の後悔も。

「脩二とは、何もなかった」

――須藤の受けた傷も。

「コウの部屋で酔い潰れてた脩二の隣に寝て、それらしく振る舞っただけ」


……全て、吉田の嘘によってもたらされた無意味なものだったということが、たった今、明かされた。

「……ふざけんなよ、何で、あんなこと」

感じたことのない憤りが胸の中を駆け巡る。

誰かを殴りたいなんて、思ったことがない。
誰かを痛めつけようなんて考えたこともない。
けれど、今の俺は震える拳を抑えるのに精一杯で。
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