ありふれた恋でいいから
「脩二に振り向いて欲しかったんだよ。私だってずっと好きだったから!大好きだったから!」

「けど、やっていいことと悪いことがあるだろう!吉田のやったことで俺たちがどれだけ……!」

吉田の身勝手過ぎる言い訳に思わず荒げた声。

けれどそれに何事かと凍り付いた周りの空気で、ここが公共の場だと思い出す。

「それは…ホントに脩二が信じるとか思ってなくて…もし、ちょっとでも私のこと気に掛けてくれたら…って…」

俺の剣幕に、急にごめんなさいと項垂れる吉田の姿が酷く滑稽に映る。

この事実をどう捉えればいいんだろう。

何もかもが嘘だったのに。
須藤と俺が別れる理由なんて何処にも存在しなかったのに。

俺たちが別れたことだけが動かしようのない事実だなんて。
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