ありふれた恋でいいから
「…帰るわ、俺」

「脩二…!待って!」

吉田が呼び止める声に振り向く気も起きず、突如人の波に逆らいながら歩き出した俺に、好奇の視線が向けられる。

けれどそれは一瞬のことで。

迫り来る新年に向けてどこからともなく始まったカウントダウンに気を取られ、周囲は盛り上がりを増していく。


心が痛い。
痛過ぎて涙も出ない。
なんてやるせない一年の終わりなんだろう。

反比例するように沈んでいく俺の心はもうズタズタで。

思うことはただ一つ。

須藤に会いたい。
ただ無性に会いたくて仕方ない。

吉田の嘘さえなければ。
こんな風に切望しなくたって、俺たちは変わらずあの頃のままでいられた筈なのに。
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