ありふれた恋でいいから
こんな俺が彼女を想うことすら、もう許されないんじゃないか。
もう、好きでいてもいけないんじゃないか。



「須藤…―――」



氷点下を極めた酷く冷たい夜。

見上げた漆黒の空には無数の星が瞬いていて、短い季節、須藤と過ごした想い出が流れ星のように消えてゆく。

何度でも思い出せるほど鮮明な想い出ばかりだった。
いつまでも大切に大切に心にしまっていたい、優しい想い出だらけだった。





……でも。

さよなら、須藤。




もう会えない。



もう想わない。







俺はこの日。
須藤への想いを無理矢理凍らせた。



心の芯から震えるほど寒く苦しい、新しい年の始まりだった。



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