ありふれた恋でいいから
時は流れてゆく。
とどまることを知らず、戻ることも許さず。

今この瞬間も、俺と須藤の距離は遠くなるばかりだろう。

そしてそのことに気付いて胸が重く沈む今はまだ、想い出として振り返る時期じゃない。

振り返るべきではないんだ。

だけど時が経てばきっといつか、幼かった恋を懐かしく思える日が来る。

真っ直ぐ過ぎた自分を、若さ故の行動だったと思い出せる日が来る筈だから。





「脩二……?」


微睡むような梓の声に呼ばれた俺はベッドに戻ると、もう一度梓を抱き寄せて、ふと小さく息を吐く。

梓との時間が流れ始めた夜。

俺は遠ざかり行く過去と、傍にある現実との狭間で揺れながら。


浅い眠りを繰り返した。
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