ありふれた恋でいいから
Ⅲ
伸ばした手の先にあるものは
―――行かないで。
遠くなる背中に手を伸ばしたいのに。
振り返らない背中を呼び止めたいのに。
どうしてだろう。
『…須藤、ごめん』
その瞬間、彼の絶望に満ちた声を思い出して、いつも体が動かなくなるんだ。
これは彼が決めたこと。
彼が選んだことなんだと。
だけどどうしても、心は張り裂けそうなほどに叫ぶのをやめない。
行かないで。
行かないで、畑野くん……。
遠くなる背中に手を伸ばしたいのに。
振り返らない背中を呼び止めたいのに。
どうしてだろう。
『…須藤、ごめん』
その瞬間、彼の絶望に満ちた声を思い出して、いつも体が動かなくなるんだ。
これは彼が決めたこと。
彼が選んだことなんだと。
だけどどうしても、心は張り裂けそうなほどに叫ぶのをやめない。
行かないで。
行かないで、畑野くん……。