ありふれた恋でいいから
「…実乃さぁ、さっきから思ってたんだけどなんか熱っぽくない?」

優しく私の額に触れたまま、いつの間にか慶介さんは内科医の表情をちらりと覗かせる。

「え、そうかな…寝起きだからとか?」

確かにどことなく身体の重さは否めなくもないけれど。
例えばそれが今しがた見た夢のせいかもしれないと思えばそれを認めるほど図太くもなくて。

何もない素振りでベッドをすり抜け、ゆっくりとカーテンを開けた私を。

「実乃」

追いかけてそっと後ろから抱き締めてくれた慶介さんは。

「俺…今年いっぱいで非常勤を辞めることになりそうなんだ」

少し神妙な口調で告げた。
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